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有給休暇の買取は違法?買い取りが可能なケースについて具体例を交えて解説


ライフホールディングス
UCHIO

こんにちは!ライフグループ広報担当の内尾です🌿
会社員として勤めていたら、有給休暇ってだれもが使いますよね。この有給休暇ですが、「有給の買い取り」ができるって聞いたことある人は少なくないでしょう。

実はこの「有給の買い取り」、一歩間違えると違法になってしまうんです。

今回は、「有給の買い取りが認められる場合」「買い取る場合の注意点」について細かく説明していきます!

企業側、従業員どちらにとっても是非知っておいて欲しい内容となっていますので、最後までお読みください!

有給休暇は買い取りできる?

原則として、有給休暇の買い取りは違法です。

その理由は、有給休暇の買い取りが本来の趣旨に反するためであり、これは行政通達(昭和30年11月30日の基収4718号)でも明記されています。

労働基準法に年次有給休暇の規定が定められている趣旨は、労働者が一定期間働いた後に休息を取ることで心身の疲れをリフレッシュさせ、健康的で充実した生活を送ることができるよう支援することです。

有給休暇を金銭で買い取ることは本来の趣旨に反することとなるため、会社が強制することはもちろん、労働者の意思に基づく場合であっても、有給休暇の買い取りは原則として違法とされています。

ただし、全てのケースで有給休暇の買い取りが違法というわけではなく、一部の例外的なケースでは買い取りが許可されています。

次の章では、有給休暇の買い取りが可能なケースについて詳しく説明します。

年休は、労基法39条1項が定める客観的条件が揃うことで発生する権利のため、買上げ予約をしたり、本来なら請求できるはずの年休日数を減らしたり与えないことは、違法である

昭30.11.30基収4718号

有給休暇が認められる3つのケース

前項で有給休暇の買い取りが原則違法であることを紹介しましたが、特定のケースでは買い取りが可能です。

以下では、有給休暇の買い取りが可能となる3つのケースを説明します。

退職時に未消化の有給休暇があるケース

従業員が退職する際に未消化の有給休暇がある場合は、従業員の同意があれば違法とならず、有給休暇を買い取ることが可能です。

労働者は退職してしまうと有給休暇を取得する権利を行使することは出来なくなるため、有給休暇を買い取ったとしても労働者の就労環境を阻害することはなく、法の趣旨に反しないため、例外的に買い取りが認められています。

退職前の引き継ぎの都合等で退職までに有給休暇を消化しきれない場合、労働者から有給休暇の買い取りを求められることがありますが、このようなケースでは買い取りが可能となります。

ただし、退職時に有給休暇を買い取る場合、日数によっては社会保険の加入期間が変動する可能性があるので注意が必要です。

例1|最終出勤日が3月25日で10日分の有給休暇を買い取った場合
退職日は3月25日で3月分の社会保険は国民健康保険/国民年金に切り替え

例2|最終出勤日が3月25日で10日分の有給休暇を取得した場合
退職日は4月4日以降で、4月分の社会保険から国民健康保険/国民年金に切り替え
※ 退職日は営業日やシフトによって異なる

退職金の規定が定められている場合は支給金額に影響が及ぶ可能性もあるため、有給を買い取りした場合の影響については詳しく説明し、労使トラブルに発展しないよう注意しましょう。

有給休暇の有効期限が満了する場合

年次有給休暇には2年の消滅時効があり、付与された日から2年を経過すると失効してしまいますが、2年を経過するまで消化できなかった有休休暇については買い取りが認められています。

退職時に未消化の有給休暇があるケースと同様に、権利が失われる有給休暇を買い取ったとしても、労働者が自由に利用できる有給休暇日数を減じることにはならないため、買い取りが可能となるのです。

(時効)第105条
この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

労働基準法|e-Gov法令検索

法定日数を超えて有給休暇を付与している場合

年次有給休暇は、労働者の勤続年数に応じて付与しなければならない日数が法律で定められており、これを法定日数といいます。

実際の有給休暇の付与日数は会社の就業規則によって異なっており、福利厚生の一環として法定日数以上の有給休暇を付与する会社も増えているのですが、この法定日数を超えて付与した有給休暇については買い取りが認められます。

前述した通り、法定日数を超えて付与した有給休暇は福利厚生の一環として会社が独自に定めたものであり、労働基準法の制限を受けることはありません。

たとえば、年次有給休暇の法定付与日数が10日の従業員に対して、さらに5日の有給休暇を付与している場合、この5日分については買い取りが可能となります。

■有給休暇の法定日数

有給買取金額の計算方法

ここからは、有給休暇を買い取る場合の賃金計算の方法について解説します。

前提として、有給休暇を取得した場合の賃金の計算方法については、労働基準法第39条で以下の3通りのいずれかで計算するように定められており、どの計算方法によって計算するかは就業規則等であらかじめ定めておかなければなりません。

  1. 通常賃金に基づいて計算する
  2. 平均賃金に基づいて計算する
  3. 標準報酬月額に基づいて計算する

どの会社でも、通常有給休暇を取得した場合の賃金計算方法については就業規則等に定められていると思いますので、買い取りを行う際は労使トラブルを回避する意味でも既存の規定を踏襲するのが望ましいと考えられます。

(年次有給休暇)労働基準法 第39条
(①〜⑧ 略)

⑨ 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。
ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。

労働基準法 | e-Gov法令検索

■労働基準法施行規則(厚生労働省令)

第25条
法第三十九条第九項の規定による所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金は、次に定める方法によつて算定した金額とする。

一 時間によつて定められた賃金については、その金額にその日の所定労働時間数を乗じた金額

二 日によつて定められた賃金については、その金額

三 週によつて定められた賃金については、その金額をその週の所定労働日数で除した金額

四 月によつて定められた賃金については、その金額をその月の所定労働日数で除した金額

五 月、週以外の一定の期間によつて定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額

六 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(当該期間に出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金がない場合においては、当該期間前において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金が支払われた最後の賃金算定期間。以下同じ。)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額に、当該賃金算定期間における一日平均所定労働時間数を乗じた金額

七 労働者の受ける賃金が前各号の二以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によつてそれぞれ算定した金額の合計額

② 法第三十九条第九項本文の厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金は、平均賃金又は前項の規定により算定した金額をその日の所定労働時間数で除して得た額の賃金とする。

③ 法第三十九条第九項ただし書の厚生労働省令で定めるところにより算定した金額は、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)をその日の所定労働時間数で除して得た金額とする。

労働基準法 | e-Gov法令検索

通常賃金で計算する場合

3つの計算方法のうち、最も一般的なのが通常賃金での計算方法になります。

労働者にとってはいつも通りの賃金が支払われるため認識の相違がなく、労使のトラブルが起こりづらい計算方法といえます。

具体的な計算方法は月給制や日給制、時給制によってそれぞれ計算方法が異なります。

月給制の場合:月給額(基準賃金額)÷所定労働日数×有給買取日数

例:月給25万円・所定労働日数20日の労働者から有給を5日買い取った場合

25万円 ÷ 20日 × 5日 = 6万2,500円
日給制の場合:日給額×有給買取日数

例:日給11,000円の労働者から有給を5日買い取った場合  

11,000円 × 5日 = 55,000円
時給制の場合:(時給額×1日の所定労働時間)×有給買取日数

例:時給1,000円・所定労働時間6時間の労働者から有給を5日買い取った場合

1,000円 × 6時間 × 5日 = 30,000円

平均賃金に基づいて計算する

平均賃金は、直近3か月の賃金の平均額を利用する計算方法で、休業補償を計算したり、懲戒処分による減給額を計算するときに用いられます。

具体的には下記の計算方法によって求められます。

平均賃金 = 過去3ヶ月間に支払われた賃金の総額 ÷ その期間の総日数(歴日数)

毎月支給される手当等は賃金の総額に含まれますが、見舞金など臨時で支給された項目は含まれません。また、期間中の総日数は労働日だけでなく、休日を含めた歴日数で数えますので注意が必要です。

例:3ヶ月の賃金総額が75万円・総日数90日の労働者から有給を5日買い取った場合

平均賃金 = 75万円 ÷ 90日 =8,333.33円(銭未満切り捨て)
買い取り金額 = 8,333.33円 × 5日 = 41,666(円未満切り捨て)

標準報酬月額に基づいて計算する

標準報酬月額とは、社会保険料を算定する際の基準となる金額のことです。

月給が21万円~23万円の場合は「22万円」のように、毎月の給料を切りの良い幅で区切って設定された金額なので、端数が出にくく計算が簡素になります。

しかし、従業員の給与次第では実際に支給されている金額よりも標準報酬月額が小さくなるケースもあり、有給を使用することで得をする従業員と損をする従業員が出てきてしまうなど、不公平な面もあります。

また、社会保険に加入していない従業員は標準報酬月額が設定されていないため、有給買取のためだけに標準報酬月額を計算しなければならないため、実務上のメリットはほとんどないと言えるでしょう。

有給休暇買い取りの注意点

最後に、有給休暇を買い取る際に気をつけたいポイントについて解説します。

年5日の有給取得義務を満たすことはできない

2019年から施行された年5日の有給休暇取得義務は、法定の年次有給休暇付与が10日以上付与される従業員が対象となっています。

有効期限が満了する有給休暇を買い取ること自体は可能ですが、これによって年5日の有給休暇取得義務を満たすことはできません。

改正法の趣旨は、有給休暇の取得促進により労働者が心身ともに健康な状態で過ごせる就労環境を整備することです。

有給休暇の買い取りは休暇の取得促進と心身のリフレッシュという法の趣旨に反するものであり、有給休暇の「取得」にはあたらないため注意が必要です。

有給休暇の買い取り予約は違法

従業員の有給休暇の買い取りを予約することは、労働基準法の趣旨に反し違法となります。

会社があらかじめ有給休暇の買い取りを予約してしまうと、従業員は有給休暇を積極的に使用する必要性がなくなり、取得率の低下につながることが懸念されるためです。

有給休暇の規定が設けられている目的は労働者の心身をリフレッシュさせることですので、従業員には計画的に有給休暇を取得させるようにしましょう。

有給休暇の買い取りは会社の義務ではない

有給休暇の買い取りは会社の義務ではありません。

取得申請された有給休暇については時季変更のみが権利として認められ拒否することはできませんが、買い取りについては拒否することが可能です。

有給休暇を買い取った場合は賞与として取り扱う

有給休暇を買い取った場合、給与ではなく賞与として扱う必要があります。

そのため、支給金額に一定の割合を乗じて社会保険料を計算し、控除する必要がある点に注意しましょう。

また、従業員へ賞与を支払った際は、支給日から5日以内に管轄の年金事務所または事務センターへ賞与支払届を提出する必要がある点にも注意が必要です。